食品や飲料のストック、調味料、日用品、防災用の備蓄品などを収納する場所として重宝するパントリー。家を新築する際に、あらかじめパントリーのスペースを確保して間取りを考えるケースが増えてきました。家族のライフスタイルや収納したいアイテムの量を考慮しながら、設置場所や広さ、内部の仕様を決めていくことが重要です。
今回は、パントリーの形状や間取りプラン、メリットとデメリットなど、知っておくと便利な基礎知識を解説します。使いやすいパントリーはご家庭によって千差万別。我が家にとってベストなパントリーをプランするための参考にしてくださいね。
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パントリーとは
パントリーとは、食品や調味料、日用品、防災備蓄品などの保管庫として使うスペースです。英語の「pantry」には食品貯蔵庫という意味があり、もともとはホテルの厨房に隣接した配膳室のことを指す言葉でした。現代では、ストックをまとめて整理したり、使用頻度が低いキッチン用品を収納したりできる場所として活用します。
使いやすいパントリーにするためのプランニングポイント
パントリーは家の中にある収納スペースの中でも収納物の入れ替えが比較的多く、流動的であるという大きな特徴があります。それだけ頻繁に使う機会があるということですから、使いやすさに重点を置いてプランすることが大切です。使いやすいパントリーのプランニングポイントを4つご紹介します。
ポイント1.広さ
「パントリーとして使うならこの広さ」という推奨値は、実はありません。収納物の量や種類は各家庭で異なるからです。注意したいのは、収納量を多く確保したいがために広すぎるスペースをプランしてしまうこと。家全体の床面積が変更できない場合、収納スペースを広くすればするほど居住スペースや作業スペースは狭くなります。大容量のパントリーができた一方でキッチンに十分な広さが確保できず、調理や片付けがしにくい・親子で一緒に立つだけの余裕がないといったことになりかねません。
プランニングのテクニックのひとつとしておすすめしたいのは、幅や奥行きを15cm単位で検討することです。システムキッチンのキャビネット割りと同じ単位なので、サイズ感を把握しやすいはずです。伸ばしたり縮めたりする時に15cm刻みでプランしていくとサイズ感を把握しやすいでしょう。
また、システムキッチンのカップボードのサイズを目安にするのもおすすめです。採用率が高いカップボードは幅90cm、奥行き45cmのタイプですので、この寸法をベースにしてみましょう。「これとあれを収納するとしたらカップボード2つ分の幅が必要だな」という感じで伸縮させるとプランしやすいです。
さらに追加で頭に入れておきたいのが、物の出し入れの際に動くためのスペースです。ある程度の広さのパントリーだと内部での移動が発生するため、収納スペースに加えて人が出入りし物を出し入れできるスペースを足してプランしてください。
ポイント2.レイアウト
パントリーのレイアウトとは、家全体の間取りの中でパントリーを隣接する部分とどう接続するかを考えるという意味です。つまり、パントリーを使う時にどこから入ってどう出るかという動き方を考える作業が必要です。
パントリーのレイアウトには、壁面に沿って設置する「壁付けタイプ」、1ヶ所から出入りする独立したスペースの「ウォークインタイプ」、入口と出口の2つの開口部があり通り抜けできる「ウォークスルータイプ」の3タイプがあります。たとえば、キッチンの横にパントリーを隣接させる場合、家全体の端にあたる部分なら壁付けタイプかウォークインタイプになりますし、廊下や脱衣室など他の空間からキッチンへ移動する途中の位置に設置するならウォークスルータイプが使いやすいです。
パントリーの収納物を主にどこで使うか、どこから運び入れるかなど、パントリーを使う前後の動きまで含めてレイアウトを考えることが大切です。
レイアウトについて詳しくは次の章で解説します。
ポイント3.設置場所
パントリーの設置場所は、レイアウトと同時に検討するのが鉄則です。買い物から帰ってきてスムーズに物を運び入れることができるよう、玄関からキッチンに行くまでの廊下に設置するのであれば、壁付けタイプかウォークスルータイプになりますし、キッチンの隅を活用するならウォークインタイプが使いやすいでしょう。
キッチン以外の場所からもアクセスしたいのか、基本的にキッチンからのみアクセスしたいのか、パントリーの使い方の希望によって設置場所、そしてレイアウトはある程度絞れます。また、ライフスタイルや家族構成によっては設置場所を複数に分散したほうがいいケースがあることも知っておきましょう。玄関近くに防災品関連を、廊下に日用品のストックを、キッチン隣に食品や飲料・調味料を収納するといったようにいくつか分散設置しておくと、デッドスペースを活用しやすいです。「何がどれだけ収納されているのか分からず賞味期限を切らしてしまった」など、奥行きが広いパントリーに起こりがちなムダも防げます。
ポイント4.内部の仕様
入居して生活し始めると、物は必ず増えます。パントリーに収納する物も、設計段階で想定していた量以上に増えるというケースは珍しくありません。とはいえ無限にパントリーを広げるわけにはいかないため、内部をいかに効率よく収納できる仕様にするかという点もポイントです。
パントリー内部を最大限収納スペースとして活用するには、棚や引き出しをバランスよく配置することがコツとなります。パントリーは壁面やコーナーをオープンな状態で使いますので、扉を開けてから出し入れするカップボードよりは物の出し入れがしやすく、棚や引き出しの配置次第で隅から隅まで収納スペースとして使えるのです。
内部の仕様のバリエーションについても記事の後半で詳しく説明します。
パントリーのレイアウト
パントリーのレイアウトは、使用する際の動き方、つまり動線を意識しながら検討する必要があります。先ほど3タイプあると軽く説明しましたが、それぞれもう少し詳細に解説していきます。
壁付けタイプ
キッチンの壁面に収納スペースを設けるタイプのパントリーで、3つのタイプの中ではもっともシンプルなレイアウトです。奥行きは浅い場合は30cm、深い場合は45cmが一般的ですが、深くしすぎると目の高さより上の部分や腰より下の部分に収納したものは出し入れしづらくなるため注意しましょう。
省スペースなので、キッチン本体の背面スペースや横、ダイニング、廊下、階段下など設置場所の選択肢は多いです。特にキッチンの背面スペースに設置すると、料理中に振り向いてすぐ収納物が取れるため、調理器具や食器、使用頻度が高い調味料や乾物などのストック類を収納すると使い勝手がアップします。
扉をつければ内部が見えないためすっきりと仕上がり、対面キッチンやアイランド型・ペニンシュラ型などのオープンキッチンとの組み合わせがしやすいです。扉の開閉の手間をかけたくない、あえて見せる収納にしたいという場合は、扉をつけずにオープン仕様にするのがおすすめです。どこに何があるかすぐ確認できますし、物の取り出しも簡単にできます。賞味期限が近い食材をあえて置いておいて、使い忘れを防ぐといった使い方もよいでしょう。
ウォークインタイプ
独立したスペースで1ヶ所だけ開口部を設けて出入りするタイプのパントリーです。壁面3面をフル活用できるため、同じ床面積であればもっとも収納量を多く確保できます。棚や引き出し、バスケット、有孔ボードなどを上手に組み合わせれば、小さいサイズのものも収納しやすいです。
開口部に扉をつけてもつけなくても独立性が高く内部が見えにくいため、来客には見せたくないものを収納するのに向いています。床から60cm前後の高さまではフリースペースにしておくと、箱買いした水や備蓄品などを収納しやすいです。コロ付きのワゴンをセットしておくと、出し入れもスムーズですね。
壁付けタイプのようにオープンな状態ではないため、サイズが大きいものを収納したい場合は中に運び入れる際に通りやすい幅の開口部にしておく必要があります。また、クローズ空間だけに湿気がたまりやすいため、窓を設けたり換気設備を追加したりして内部の空気を入れ替えできるようにしておくとよいでしょう。
ウォークスルータイプ
入口と出口が別々になっており、通り抜けできるタイプのパントリーです。二方向からアクセスできるため、家事動線とリンクさせることが出来る設置場所にプランすると動きがスムーズになります。たとえばキッチンと洗面脱衣室の間や、キッチンと玄関の間にある廊下に設置すると、ものの出し入れのために出入りを繰り返す必要がありません。最近人気が高い回遊性のある間取りとの相性はとてもいいです。
形状は壁付けタイプと似ていますが、壁付けタイプは設置した空間内の使用に限定されがちなのに対して、ウォークスルータイプは複数の空間からアクセスできるのが大きな違いです。パントリースペースとしてしっかり広さを取るプランだけでなく、幅や奥行きがコンパクトなプランにして家全体の複数箇所に分散設置すると、収納するもののバリエーションが広がり、ものをしまい込むというよりは日常よく使うものを気軽に収納できるスペースとしてとらえると使い勝手がよくなります。
近年注目されているのが、シューズクロークと連結したプランです。玄関からシューズクローク、パントリー、そしてキッチンへと通り抜けできるため、無駄な動線がないのが特徴です。このプランについて解説している記事もぜひご参考ください。
パントリーの形状
パントリーの形状は、収納量と使い勝手に大きく影響します。1ヶ所に設置するのか分散設置するのかにもよりますが、食品や日用品などメインで収納するものの出し入れのしやすさを想定して絞り込んでいくのがおすすめです。4つの形状について、ひとつずつ見ていきましょう。
I型
キャビネットや棚を同じ壁面に一直線に設置する形状です。奥行きが狭いキッチンスペースの背面に設置することが多いですが、廊下や階段下の壁面を掘り込んでぴったりとはめ込んだ状態で設置する場合もあります。収納量を確保するには、横幅を伸ばすか奥行きを広げるかの二択になりますが、横移動が多くなったり奥にしまったものの出し入れが難しくなったりするため、大型パントリーには向いていません。
Ⅱ型
壁1面のみを使うI型が2つ対面している形状です。通路を挟んだ左右の壁面に収納スペースがあり、収納量はI型に比べて大幅に増えます。一方は細々としたものをバスケットなどに入れて収納できる棚仕様に、もう一方は有孔ボードやフックを使って長さのあるものを吊るす仕様にするなど、収納物のサイズに合わせてアレンジしやすいのが特徴です。引き出しをセットする場合は、引き出しを全開した時の寸法に加えて取り出し動作を行うために必要なスペースを確保する必要がある点に注意しましょう。全体の通路幅も、出し入れが余裕でできる幅が必要です。70~90cm、可能なら100cm程度の通路幅があると使いやすいです。
L型
コーナー部分を活用した形状です。2面の壁を使って棚を設置すると大容量の収納スペースとなる上に、I型やⅡ型のように横移動が少ないため効率的に動けるという特徴があります。2辺とも同じ長さにするパターンや、一方を長くしもう一方を短くするパターンなど、間取りに合わせて長さを調整すると壁から壁までぴったりと棚を設置できてすっきりした仕上がりになるでしょう。
一見スペースが必要なように見えますが、実はL型はコンパクトなスペースでも設置可能です。I型を2つ直角に接続したのと同じ状態ですから、横幅を調整すれば狭い場所でも問題ありません。また、一方は45cm、もう一方は30cmと2辺の奥行きを変えることもできますので、設置場所の広さや収納したいもののサイズに合わせてアレンジしましょう。
U型
壁3面を収納スペースにした形状です。Ⅱ型+I型という組み合わせで、パントリーの形状としてはもっとも収納量が多いです。収納するものの用途別、家族別、サイズ別などルールを決めて収納すると使い勝手がよいでしょう。家の中にある大型収納としてさまざまなものを集約させて管理したい場合に便利です。
U型にする場合は、3面を使える独立した空間を確保する必要があります。コンパクトさよりも収納量を重視する形状のため、家全体の間取りのバランスを見ながら広さを決めましょう。
パントリーを設置するメリットとデメリット
「収納がたくさんある家を建てたい」と考えている方の多くは、パントリーの設置を検討する傾向が強いですが、実際にパントリーを設置した場合どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
パントリーを設置するメリット
パントリーを設置することで得られるメリットのひとつは、パントリーに近い場所で使うものを集約しておけることです。キッチンであれば調理器具や食品・調味料のストック、飲料などをまとめて収納できるため、在庫管理が楽になり、賞味期限が切れる前に使い切ることができます。
大容量の収納力を確保できるというメリットもあります。システムキッチンやカップボードなども収納スペースはありますが、日常よく使うものを優先して収納するため、ストック類を収納する余裕はあまりありません。パントリーを設置すれば、ペットボトルやお米などの大きいサイズのストック類を難なく収納できるため、キッチン内がすっきりと片付いて調理作業がしやすいでしょう。
アレンジしやすい収納スペースとして活用できる点も大きなメリットです。小さなくぼみがたくさんついた棚柱という部品と棚受けがあれば、棚の高さを自由に決められるため、さまざまなサイズに対応できて非常に便利です。
パントリーを設置するデメリット
パントリーを設置することで発生するデメリットのひとつは、コストがかかることです。パントリーが広いほど、棚や部品類の数量が増えます。ウォークインタイプやウォークスルータイプで出入口に扉をつける場合、ドア本体やドア枠などの部材が必要です。また、棚を設置するために壁下地に補強を入れるコストもかかります。
ある程度以上収納量を求める場合、それだけ床面積を多く必要とするため設置スペースの確保が必須です。パントリーを広くするとなると、その分どこかを狭くしたり縮めたりしなければいけません。
また、設置場所によっては動線が長くなる可能性がある点にも注意が必要です。たとえば、廊下にパントリーを設けていると、玄関から距離が近いため、買ってきた水やお米など重量があるものをキッチンまで持っていく必要がありません。しかし、いざキッチンで使うとなった場合は廊下まで取りに行く手間がかかってしまい、急いでいる時は非効率です。
どこに設置すると便利なのか、間取りを考える際に使用時の動きをシミュレーションしてみましょう。
パントリーの間取りおすすめ実例
ここからは、パントリーの間取りのおすすめ実例をご紹介します。「うちはどのタイプが使いやすいかな」とイメージしながら参考にしてみてください。
おすすめ間取り1:キッチンカウンター横にクローズなI型パントリーを設置して作業効率アップ
参考実例:タカトーホーム
電子レンジや炊飯器などの調理家電を置いたり、調理の補助作業を行ったりできるキッチンカウンターの横にI型パントリーを設置しています。キッチンカウンターと奥行きを統一し、壁面と同じトーンの色の扉をつけているためすっきりとした仕上がりです。内部を隠せるクローズタイプは、リビングやダイニングからよく見える位置にパントリーを設置する際におすすめです。
施工実例1. キッチンのクローズド背面パントリーで収納力アップ(Haku様邸、平屋・4LDK)
おすすめ間取り2:壁付けタイプのパントリーとキッチンの移動が数歩でできる超効率的動線が便利
参考実例:マエダハウジング
壁付けタイプのパントリーというとキッチンの背面に設置するイメージが強いですが、広さが確保できるならキッチンのサイドに設けて非常にコンパクトな動線で使うプランもおすすめです。収納量を増やすため天井までをパントリーとして使う場合、オープン仕様にすると圧迫感を感じにくくなります。
おすすめ間取り3:ウォークインタイプのⅡ型パントリーは可動棚で大容量収納を実現
参考実例:クレバリーホーム
パントリーの横幅を長く取りたい場合、間に間仕切壁を立てて棚柱を固定すると耐荷重が上がり、重さによる棚板の曲がりをある程度防げます。通路幅をたっぷり確保しているため、ワゴンが使いやすく上部の棚を使う時も動きやすいですね。
おすすめ間取り4:一目で全体が見渡せるL型パントリーは棚の高さを変えてカスタマイズ
参考実例:タカトーホーム
収納量が豊富なL型パントリーは、目の前に立つと全体が一目で確認しやすいため、在庫確認が楽にできます。棚の高さを変えるとさまざまなサイズのものを収納できる点も便利。下部を広めに開けておけば箱買いした水やお米などもすっきり収納できます。
おすすめ間取り5:階段下をパントリーにしてデッドスペースを有効活用
参考実例:水嶋建設
天井が傾斜している階段下の空間は、収納スペースとして使うには最適です。階段の幅の分だけ奥行きがあるため、比較的ゆったりとした広さを確保できます。棚柱は現場カットできますから、天井高や窓の位置に合わせて長さを決めるとよいでしょう。
おすすめ間取り6:壁3面を使ったU型パントリーを日用品のストック場所としても活躍
参考実例:平屋建築ブルーハウス
パントリーの形状としてもっとも収納量が多いU字型は、スペースが広い分調理家電や日用品もしっかり収納できます。キッチンとの間に間仕切り壁を立てないことで、空間のつながりがより強くなり、ほど良い開放感も得られます。
おすすめ間取り7:ウォークスルータイプのパントリーは回遊できる間取りと相性抜群
参考実例:サティスホーム
通り抜けできるウォークスルータイプのパントリーは、家事動線とリンクさせると効果的です。キッチンと脱衣室、キッチンと玄関、勝手口と脱衣室など家事をする時に動くラインの近くに設置すること、そして2方向からアクセス可能な回遊性のある間取りであることを意識しながら取り入れると良いでしょう。
おすすめ間取り8:勝手口のそばにシンプルなI型パントリーを設けてストック類を収納
参考実例:水嶋建設
勝手口のそばにパントリーを設けておくと、買い物を終えて勝手口から入り水やお米などの重量物をそのまま収納しておけるためとても便利です。勝手口と駐車場の距離が近ければ運び入れるのも楽ですね。パントリーからキッチンへそのまま入れる間取りにしておくと、家事動線もコンパクトにできて時短になりますよ。
まとめ
パントリーのレイアウトや形状はある程度パターンが決まっています。間取りの中に落とし込む時は、全体を俯瞰して「ここにパントリーがあると便利だな」と思う場所をピックアップし、どのレイアウトや形状が設置可能かを考えるとスムーズです。
毎日ストレスなく使えるか、収納したいものがきちんと収納できるか、ものの出し入れがしやすいかといった点を重視して、パントリーのある間取りを考えていくとよいでしょう。この記事を参考に、家族でじっくり話し合って最適なパントリーをプランニングしてみてくださいね。