子どもが健やかに成長するためには、家庭環境が非常に重要です。特に「頭の良い子ども」を育てたいと考えるご家庭にとって、長い時間を過ごす住まいの環境を整えることは子どもの持つ能力を自然な形で伸ばしてあげられるきっかけづくりにもつながります。
そこで今回は、頭の良い子が育つ家づくりについて解説していきます。住宅環境の鍵となる間取りを軸に、頭の良い子が育つ家をつくるポイントや事例もたっぷりご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「頭の良い子」とは
「頭の良い子」と一言で言っても、人によってそのイメージはさまざまかと思います。判断基準をどこに置くか、能力や適性のレベルをどう設定するかによって答えは変わりますが、一般的に「頭の良い子」と言われる子どもは共通点を持っているのも事実です。ここでは、頭の良い子が持つ主な共通項をご紹介します。
自分で考える習慣がある
頭の良い子どもは、物事について自分で考えようとする習慣が身についていることが多いです。間違うこともありますが、自分なりの考えのもとに問題を解決してみようとする姿勢を見せます。親からの指示やアドバイスを待つだけでなく、自分で仮説を立てて考えてみる体験を重ねることは、将来的に勉強への取り組みにも生かせるでしょう。
好奇心が強い
好奇心旺盛な子どもは、学ぶ意欲が強いため頭の良い子と見られることが多いです。新しいもの、新しい体験に興味を持ち、自分から進んで調べたり挑戦したりすることが少なくありません。物事に疑問を持ち、前提にこだわらずにありのままを見て体感してみようとする前向きさは、知識やスキルの習得につながり、勉強に対しても積極的に取り組む可能性が高いと言えそうです。
思っていることを自分の言葉で伝えられる
自分で考えるだけでなく、自分の意見として第三者に自分の言葉で伝えようとする姿勢を持っていると、他者とのコミュニケーションが増えるため刺激を受けやすい環境を引き寄せます。さまざまな刺激によって知識を吸収できるチャンスを得やすく、言語能力も磨かれるでしょう。するとさらにレベルの高いコミュニケーションができるようになり、世界が広がっていくという好循環が生まれやすく、頭の良い子へと成長する可能性も高まります。
相手の気持ちを理解できる
頭の良い子は状況を読む力があります。相手や周囲の動向に対して細かい部分まで把握する鋭い観察力があるため、相手の感情や立場を理解してあげられるのです。こうした能力は、共感や思いやりの基盤となり、将来的にチームワークがスムーズにこなせる力が身につくでしょう。自分の主張だけでなく、相手の意見も受け入れる柔軟さによって、さまざまなことを吸収し成長していけるかもしれません。
コミュニケーション能力が高い
誰に対しても分け隔てなく接する高いコミュニケーション能力は、頭の良い子どもの多くが持つ要素です。思い込みや偏見なしに自然な雰囲気で周囲と接するため、信頼し合える人間関係を築きやすくなります。自分の考えを伝える代わりに相手の考えも聞いて、意見を交換することの意義を無意識に理解する力があると言えます。
粘り強い
困ったことが起きた時諦めずに解決方法を探したり、目標に向かってこつこつと努力を続けたりできる粘り強さを、頭の良い子は身につけていることが多いです。努力することを厭わず、即効性よりも継続性を重視します。失敗を重ねても努力を続け、知識や経験を少しずつ積み上げていくために、時間が経つほど周囲より秀でた存在になりやすいと言えるでしょう。
これら以外にも、頭の良い子が持つ共通項はたくさんあります。得手不得手も関係してくるため、子どもの性格や能力を踏まえて長所を伸ばせる環境を整えてあげることが大切です。その環境のひとつが家であることは間違いありません。
頭の良い子が育つ家とは
子どもが長い時間を過ごす家は、子どもの成長に自然と影響を与えます。前述した頭の良い子が持つ共通項を日常生活で身につけられるような環境に整えると、家での日常生活そのものが学びとなり、子どもの長所を無理なく伸ばしてあげられるかもしれません。頭の良い子が育つ住環境づくりのベースとなる間取りに注目して、押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
知識欲を満たす場所があるか
学校だけでなく家の中でも学べる場があると、子どもの好奇心を満たしやすくなります。しかも継続的に「もっと知りたい」という意欲を高めるために、子どもだけでなく親子で一緒に勉強するスペースをつくるのがおすすめです。
家族間のコミュニケーションが取りやすいか
ある程度の年齢の家族であれば、それぞれのプライバシーを重視する間取りでもいいのですが、成長期の子どもがいる場合はコミュニケーションが取りやすい環境づくりをしたいですね。子どもが安心するだけでなく、親子間の会話や共同作業を通してコミュニケーション能力を身につけることができます。
自分で考え管理する習慣が身につく過ごし方ができるか
子どもが自分で考えて行動できるようになるには、日々の生活の中で考え行動する習慣を身につけていく方法がもっとも効果的です。たとえばお手伝いがしやすい間取りだと、お手伝いを通して失敗したり、やり方を工夫する経験ができます。こうした経験を積み重ねられる環境があれば、粘り強さも身につきやすいでしょう。
積極的に取り入れたい!頭の良い子が育つ家の間取り
頭の良い子が育つ家づくりを進める上で、間取りの工夫は重要なステップです。先ほど述べた押さえておきたいポイントを踏まえて、検討をおすすめしたい間取りをご紹介します。
吹き抜け
開放感があり広々とした空間をつくれる吹き抜けは、家族間のコミュニケーションが取りやすい間取りとしても知られています。
吹き抜けの上部に子ども部屋や廊下があれば、上下階にそれぞれいる家族が会話しやすく、家族の気配をさりげなく感じながら過ごすこともできるため安心です。声をかけやすいオープンさが、自然にコミュニケーションの機会を増やしてくれるでしょう。
リビング学習スペース+オープンキッチン
リビング内にデスクや椅子をセットし、子どもが勉強できるようにしつらえたリビング学習スペースは、最近注目されている間取りです。
子ども部屋で勉強するのとは違って家族と同じ空間で過ごせるため、孤立感がありません。分からないことを親にすぐ質問できるので、自然と会話も増えますね。さらに、リビングに隣接したキッチンをオープンキッチンにした間取りは、調理をしながら勉強している子どもを見守ることができる点が魅力です。
リビング学習の空間づくりは別の記事でも解説していますので、気になる方はこちらもご覧ください。
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小上がりスペース
小上がりスペースとは、部屋の床面から30~40cmの高さを床面とした小さなスペースを指します。
段差を活かして収納スペースをつくったり、引き戸を設けて個室としてもリビングの一部としても使えたりとさまざまな使い方ができます。子ども専用スペースにすれば、遊びや勉強に集中できる場になるだけでなく、おもちゃや本などの管理を子ども自身にまかせて自主性を身につける場としても活用できますよ。
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ファミリースペース
ファミリースペースとは、家族で一緒に過ごせる広さを確保した家族共有のスペースのことです。階段を上り切った2階の一部やリビングの隣の部屋などをファミリースペースにするパターンが見られます。
親子で一緒に遊ぶ過ごし方だけでなく、読書をしている親のそばで子どもはプラモデルをつくっているなど、家族がそれぞれ別々のことに集中しつつ空間を共有し、お互いの気配を感じながらリラックスして過ごせるのが魅力です。
スキップフロア+ライブラリー
床の高さを半階分上げてつくる中2階のようなスペースをスキップフロアと言います。小上がりスペースをより高く、広くした感じをイメージしてもらえると分かりやすいです。
階段の途中に設けるパターンが多いですが、リビングの一部分の床を上げてつくるパターンもあります。壁などはなくオープンなスペースではあるものの、1階の床よりも高い位置で視線が届きにくいため、好きなことに没頭したい時に便利です。造り付けの本棚を壁面に設置してライブラリーとして使えば、子どもの知識欲を刺激できるでしょう。
参考実例:積水ハウス
庭とつながるタイルデッキやウッドデッキ
リビングや個室を庭に面した位置にするなら、屋外と屋内が一体となった中間地点としてタイルデッキやウッドデッキを設置するのもおすすめです。
気兼ねなく外遊びやガーデニングができて自然と触れ合える体験も増えるため、子どもの好奇心を刺激したり観察力を育むことができます。誕生日やクリスマスにホームパーティーをする時は、天気が良ければセカンドリビングとしても使えますよ。
回遊動線(家事の習得)
始点から動いて行き止まることなく始点にまた戻ってこれる動き方を回遊動線と言います。
キッチンや洗面所とリビング、廊下などにそれぞれ二方向の出入口を設けてつなげた間取りだと、回遊動線となり子どもが家事を手伝う体験がしやすくなります。年齢に合わせて家事を少しずつ分担させていくと、責任感や管理能力を育むきっかけになるでしょう。
頭の良い子が育つ家のおすすめ間取り
子どもの好奇心を満たし、独立心やコミュニケーション能力などを日々の生活の中で伸ばせる間取りを検討している方のために、ここからは頭の良い子が育つ家のおすすめ間取りを3つ紹介します。
おすすめ間取り1:1階リビングと吹き抜けに面した2階の通路とでコミュニケーションが取れる大空間
参考実例:三昭堂
吹き抜けをつくるなら、1階と2階がゆるくつながってコミュニケーションが取りやすい間取りにするのがおすすめです。2階の手すりの間にガラスをはめておけば、圧迫感が出ない上に子どもの落下防止にもなって安心です。家のどこにいても家族の気配を感じられ、子どもが落ち着いて過ごせるでしょう。
おすすめ間取り2:リビングに直結したスキップフロアは大容量の本に触れて知識欲を高められるホームライブラリーに
参考実例:工務店-オオトリ建設-
同一空間に高低差をつけてスキップフロアを設けると、立体感のある個性的な間取りになります。壁面を造り付けの本棚にしてたくさんの本を収納すれば、親子で読書を楽しめるスペースに。カウンターを設置してスタディスペースに、ソファを置いてファミリースペースにと用途をアレンジしながら楽しめます。
おすすめ間取り3:自然の風に吹かれて過ごせるウッドデッキはアウトドアリビングとしても活用可能
参考実例:風間建築事務所
最近の新築住宅は天井高が高くなっているため、庭に出る掃き出し窓も庭が大きく望めるハイサッシタイプが主流です。さらに、リビングの床と同じ高さのウッドデッキを設置すれば、リビングの延長として使えます。太陽光や風を直接感じながら過ごす経験は、子どもの五感を刺激して創造性を高めてくれそうですね。
頭の良い子が育つ家をつくる際の注意点
頭の良い子が育つ家をつくるということは、家のあちこちで子どもがさまざまなことを経験できる環境をつくることでもあります。ただし、親の思いが強すぎて子どもが窮屈な思いをするようでは本末転倒です。頭の良い子が育つ家づくりにおいて、意識しておきたい注意点を2つご紹介します。
子どもの性格や特性を考慮する
冒頭でもお伝えしたように、人によって「頭の良い子」の判断基準は違います。と同時に、子どもが持つ能力や適性も千差万別ですから、良いと言われる間取りがどの子どもにもフィットするわけではありません。たとえば子どもに読書を促そうと大容量の造り付け本棚を設置したとしても、子どもがあまり本に興味がなければ奥行きの浅い使いにくいスペースになってしまいます。最近人気のリビング学習も、子どもによっては集中力が途切れてかえって勉強しにくいかもしれません。
ただし、子どもの興味は移ろいやすいものです。成長に沿って関心を持つ分野が変わってきても対応できるよう、ある程度用途に柔軟性を持たせた間取りにしておくとアレンジしやすいでしょう。
親の姿を観察できる距離感を大切に
頭の良い子が育つ家のよさを生かしたいなら、親子「子どもがどう過ごせるか」という視点に加えて「親がどう過ごすか」という視点も持った上で間取りを考えるのがおすすめです。家事をする姿やテレワークで働く姿を見せることは、子どもにとっても刺激となり、学びにつながっていくでしょう。親が子どもを見守るのと同じく、子どもが親を観察できる環境が理想的です。適度にプライバシーを守りながらもお互いの気配を感じられる、親子それぞれの距離感を保ってゆるくつながれる間取りを考えていくと良いでしょう。
まとめ
頭の良い子とは、単に勉強ができるという意味ではなく、好奇心を持って自ら行動できる力や相手と心地よいコミュニケーションが取れる力を持つ子どもと捉えると、何を優先して間取りを決めていけばいいか見えてくるのではないでしょうか。ご家庭のライフスタイルや価値観をベースに、子どもが健やかに育つ住環境を整えていきたいですね。
今回の記事で紹介した事例やポイントを参考に、親子の笑顔があふれる住まいづくりをぜひ実現してください。