注文住宅の良さは、価値観や好みに合わせて家を自由にデザインできる点です。家族との大切な時間を過ごす場所だからこそ、こだわりをたくさん取り入れたいですね。中でも最近人気が少しずつ高まっているのが「勾配天井」です。天井に傾斜をつけ、斜めの家にするだけで、個性的で開放感あふれる空間を演出できるのが特徴です。
今回は、屋根裏の空間を効果的に活用できる勾配天井の特徴やメリットとデメリット、勾配天井を取り入れた間取り例、おしゃれに見せるための演出ポイントなどを詳しく解説します。
戸建を検討中の方におすすめする関連記事はこちら!
\人気ハウスメーカーの中から本気で厳選!/
【2024年】ハウスメーカーランキング!子育て世帯におすすめの会社一覧も
勾配天井とは
勾配天井とは、その名の通り勾配、つまり傾斜がある天井を指します。基本的には屋根の形状に合わせてつくるため、一般的な水平の天井を設けた時には見えない小屋裏の空間を活用できるのが特徴です。小屋裏部分を活用したい場所だけ勾配天井にするケースや、2階の居室全体の天井を勾配天井にして大空間をつくるケースなど、さまざまなパターンがあります。
露出させた小屋裏空間は、趣味の部屋や子ども部屋、収納スペースなどライフスタイルに合わせて活用できるのが大きな魅力です。
勾配天井のメリット
勾配天井は、一般的な水平の天井とは違うメリットがたくさんあります。ひとつずつ見ていきましょう。
開放感がある
勾配天井のもっとも大きな魅力は、圧倒的な開放感です。傾斜の角度によって開放感の程度は異なりますが、斜めになった天井面の上がっている方は通常よりも高い位置になるため、同じ床面積の部屋でも広く感じられます。リビングやダイニングに取り入れるとゆったりとした雰囲気を楽しめるほか、小屋裏の空間を勾配天井にして個性的なスペースに仕上げるのもおすすめです。
風通しがよくなる
勾配天井は、風通しの面でも優れた効果を発揮します。部屋の通気性を高めるには窓の設置位置が重要で、対面になる壁にそれぞれ設ける、もしくは高低差をつけて設置すると空気の流れがスムーズになります。勾配天井の場合、天井の傾斜を利用して窓の設置位置の高低差を大きく取れるため、室内の湿気や熱気、生活臭などを効率よく排出できるのです。
安定した採光が得られる
勾配天井の傾斜を利用して天窓を設けると、室内全体が明るくなります。同じサイズの窓であれば、天窓は壁面の窓の約3倍の明るさを得られるからです。周辺の住宅との距離が近くても、自然光を遮るものがないため一日中安定した明るさの中で過ごせます。天井面が高い方に近い壁面に高窓を設けると、より広い範囲に自然光が広がるのも大きなメリットです。
狭い床面積でも広く感じる
勾配天井を狭い床面積の空間に採用すると、傾斜があるためにあまり狭さを感じさせません。人は無意識に室内の壁面や天井面に沿って視線を動かすため、勾配天井独特の斜めになった天井面に合わせて視線を大きく動かすことになり、広がりを感じやすくなるのです。床面積を大きく確保できない場合は、勾配天井を採用して斜めの内観を造ると圧迫感が軽減されます。
上の階の床面積を減らす必要がない
大きく広々とした空間が魅力の吹き抜けは人気がありますが、下の階の開放感を得るために上の階の床面積を削る間取りです。上の階の部屋や収納スペースを減らして吹き抜けを設けるので、家族構成によっては部屋数が不足したり、1つ1つの部屋の床面積を縮小しなければいけない可能性があります。対して、小屋裏の空間を活用する勾配天井なら上の階の床面積を減らす必要はありません。上の階に部屋や収納スペースをしっかり確保しつつ、広がりのある空間が楽しめるでしょう。
勾配天井のデメリット
さまざまなメリットがある勾配天井ですが、過ごしにくいと感じる面もあります。続いて、勾配天井のデメリットについて見ていきましょう。
コストが高くなる
勾配天井は、一般的な水平の天井と比べると壁の面積が増えます。また、天井面自体も水平の天井面より広くなります。天井面が屋根に近くなる分、室内の快適性を維持するには断熱性や遮音性をより高めておく必要がありますから、斜めの家づくりは材料費や施工費が上乗せになると考えておきましょう。
メンテナンスがしにくい
小屋裏の空間を室内に取り込む分、勾配天井の上がった部分はかなり位置が高くなります。天窓や高窓、照明器具などの清掃を行う際は、脚立が必要になることがほとんどです。脚立を使っても届かない位置に窓や照明器具がある場合は、専門業者に定期的なメンテナンスを依頼することになるため、メンテナンスのしにくさやコスト増をあらかじめ把握しておく必要があります。
冷暖房効率が悪くなる
空気の特性として、暖かい空気は空間の上に、冷たい空気は空間の下にたまります。天井が高くなる勾配天井の空間は、冬場になると足元に冷たい空気がたまりやすくなるのがデメリットです。空間全体の空気を攪拌できるシーリングファンや、足元をやさしく暖める床暖房などの設備を設置し、冷暖房効率を上げる工夫が必要です。
おしゃれで個性的!勾配天井のあるおすすめ間取り
天井が斜めの家が気になるけれど、どんな風に取り入れたらいいか悩んでいる方は多いのではないでしょうか。そんな方のために、おしゃれで個性的な勾配天井のあるおすすめ間取りを5つご紹介します。
おすすめ間取り1:横長のLD全体を勾配天井にして開放感あふれる空間に
参考実例:タカトーホーム
敷地や日当たりの関係で、LD(リビングダイニング)が横長の間取りになる場合、床面積は同じでも正方形に近いLDに比べるとやや手狭な印象になりがちです。そこでLD全体を勾配天井にすると、視線が自然と高くなり開放的な空間になります。ポイントは、庭の方に向けて傾斜を上げていくこと。より大きな窓が設置できるだけでなく、外に視線が伸びてゆったりした空間の印象を与える効果があります。
おすすめ間取り2:勾配天井のある和室で茶室のような静かな時間が流れる空間
参考実例:重量木骨の家
客間や書斎としても使い勝手がいい4畳半の和室を勾配天井にしています。ほど良い手狭さとゆるやかな傾斜の勾配天井を組み合わせることで、茶室のような落ち着ける空間に。床面に直接座るスタイルで過ごす和室は、視線が低い位置に集まるため、極端に高い天井にすると静穏さが出しにくくなってしまいます。斜めの角度がゆるい勾配天井にすると、開放感と閉塞感の絶妙なバランスを楽しめます。この趣(おもむき)は斜めの家づくりならではの提案です。
おすすめ間取り3:三角タイプの勾配天井でアットホームな雰囲気を演出
参考実例:SUVACO
勾配天井というと片流れ、つまり1面だけ傾斜がついたシンプルな形状というイメージが強いですが、屋根の形状を生かして2面が斜めとなった三角形状の勾配天井もあります。部屋の中心がもっとも高くなるため、広がりを強く感じられる形状です。壁面に三角屋根の形がくっきり出るので、ぬくもりのあるアットホームな雰囲気を演出しやすいという魅力もあります。リビングや書斎など、お気に入りの空間が三角タイプの勾配天井になるような間取りにすると、こうした演出が実現できます。
おすすめ間取り4:化粧梁を施した勾配天井でダイナミックさを強調した広々空間に
参考実例:ものづくりの大工後藤
天井に化粧梁を設置する方法は、一般的な水平の天井でも人気が高いです。勾配天井の場合、化粧梁を傾斜にあわせて斜めに設置すると、化粧梁の凹凸に加えて天井の角度をより強調できるため、メリハリのある空間になります。梁の太さや間隔、仕上げ材などによって雰囲気も大きく変わるので、インテリアの方向性に合うようプランして個性的な斜めの空間を楽しみましょう。
おすすめ間取り5:秘密基地のような小屋裏スペースと勾配天井は相性抜群
参考実例:ステーツ
小屋裏とは、屋根と天井の間にあるスペースです。通常は上階の屋根の上にあり見えませんが、屋根の傾斜に合わせて勾配天井をつくることで小屋裏を日常使いのスペースとして使えます。窓から外を遠く見渡せる高さにあり、あまり広くないスペースだけに、誰にも邪魔されずに過ごせる秘密基地感たっぷり。勾配天井で遊び心を加えれば、セカンドリビングや書斎としても楽しめます。
センスが光る勾配天井の演出ポイント
勾配天井は開放感だけでなくデザイン性の高さも魅力のひとつですが、より個性を引き出す方法を知っておくと家づくりの選択肢が広がります。斜めの天井面の家にして空間にアクセントを加えつつ、プラスαで楽しめる演出ポイントを活用してみましょう。
梁を見せる
おすすめ間取り4でもご紹介しましたが、梁を見せる演出は勾配天井の魅力をより高めます。傾斜に合わせて設置する方法だけでなく、水平に渡して勾配天井の傾斜を強調し、部屋全体に立体感を出す方法もおすすめです。梁の素材は木材や鉄など、家全体のデザインコンセプトに合わせて選びましょう。内装材と色を合わせれば統一感がある印象に、異なる色にすればアクセントになってメリハリが生まれます。
仕上げ材にこだわる
斜めの家の天井面の仕上げ材は、部屋全体の印象を大きく左右します。たとえば木目がはっきりした木材を傾斜に沿って張ると、木目が映えてとても美しいです。漆喰や珪藻土を使った塗り仕上げは、シンプルで素朴な雰囲気が出せます。勾配天井の面だけを周囲の壁面よりも濃い壁紙で仕上げると、コントラストが効いてシャープな印象を与えられるでしょう。自然光の入り方なども考慮しながら、素材や色を選んでみてください。
天井の高さを生かせる窓を選ぶ
天窓や高窓を設置すると採光しやすいことは前述しました。それに加えて、せっかくですから勾配天井ならではの傾斜や天井面の高さを最大限生かした窓選びをしたいですね。たとえば、天井面が上がった側の壁面に細い縦長窓を複数設置すると、モダンでスタイリッシュな雰囲気を出せます。斜めの家に合わせた台形窓は、遊び心を感じさせるおしゃれで個性的な印象になるでしょう。方角や風通しの良さ、メンテナンスのしやすさなども踏まえながら、窓の種類や配置を考えましょう。
照明器具で光の演出を楽しむ
勾配天井に照明器具を設置する場合は、部屋の用途に合った機能性と、仕上げ材とのバランスが取れたデザイン性の双方を両立させたいですね。傾斜面にダウンライトを埋め込む方法は、すっきりした印象になることから人気が高いです。そのほか、化粧梁に設置したスポットライトの光を傾斜面に当てて間接照明とする方法や、高さを生かしてペンダントライトを複数並べて設置する方法など、さまざまな演出が可能です。照明器具の位置を調整できるダクトレールを活用するのもおすすめですよ。
勾配天井を採用する際の注意点
一味違った印象を強調できる勾配天井ですが、設計時に考慮しておきたい注意点があります。新築してから数十年生活する場ですから、快適に暮らすために押さえておきたい注意点を3つ解説します。
冷暖房効率を上げる設備を設置する
勾配天井、特に高さが上がった側は、構造上どうしても空気が滞留しやすいです。特に冷暖房効率については、水平の天井と比べるとどうしても低くなります。なるべくまんべんなく冷暖房できる工夫をしましょう。おすすめは、空気を攪拌するシーリングファンを設置することです。弱風モードでもゆるやかに空気を循環させるので、室内の温度が安定し快適な室温を保ちやすくなります。
天井面の断熱性を高める
屋根の形状に沿ってつくることが多い勾配天井の家は、水平の天井と比べると屋根が受ける太陽光の熱の影響を受けやすいです。夏は暑く冬は寒いという状況にならないよう、天井面の断熱を確実に行い、夏の熱気や冬の冷気が室内に伝わりにくい状況を維持しましょう。あわせて、雨の音が響かないよう防音効果が高い建材を使用するといった対策もしておくことが大切です。
傾斜角度をよく検討する
勾配天井の傾斜角度は、空間の印象に大きく影響します。傾斜が急な勾配天井は、ダイナミックな印象を与える一方で、圧迫感が出やすいです。傾斜が緩やかな勾配天井は、リラックスしやすい印象に仕上がりますが、角度が水平に近いほど勾配天井のよさを感じにくくなってしまいます。傾斜角度が設計図に書かれていてもイメージしにくいかもしれませんが、自分の思う仕上がりに近いか、設計段階で担当者によく確認しましょう。
まとめ
水平の天井とは違って動きを感じさせる勾配天井は、開放感があり、部屋の快適性を高めたい方にとってとても魅力的です。ただし、メリットとデメリットの双方をよく把握した上で、斜めの家づくりをどのように取り入れるといいかしっかり検討しましょう。
今回の記事で紹介した事例や演出ポイントを参考に、家族が心地よく過ごせる空間づくりの方法として検討してみてくださいね。