子どもが成長してくるにつれて、親にとって悩ましいのは家での学習環境をどのように整えるかです。特に最近注目されている「リビング学習」について気になっている方も多いのではないでしょうか。
「リビング学習は魅力的だけれどうちは狭いから…」と考えている方に向けて、今回は狭い間取りでも実現できるリビング学習を実現するコツをお伝えします。リビング学習のメリットとデメリットや必要な広さを把握し、狭い間取りでもリビング学習のスペースをつくれるポイントや実際の間取りアイデアを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
リビング学習とは
「リビング学習」とは、その名の通り、リビングルームで子どもが勉強するスタイルです。家族が集まるリビングに学習スペースを設けることで、独立したスペースで勉強する個室学習にはないメリットがあると言われています。未就学や小学生の子どもがいる家庭では、リビング学習を取り入れるケースが増えているのだそうです。
専用の勉強部屋を確保しにくい狭い間取りの家では、リビング内のスペースを上手に活用しながら子どもの学習環境を整えるリビング学習はとても有効な方法と言えます。
リビング学習のメリット
最近では珍しくなくなってきたリビング学習。親にとっても子どもにとってもさまざまなメリットがあります。リビング学習の主なメリットを4点紹介します。
子どもが孤独感を感じにくい
子どもが自分の部屋で勉強する場合、他の空間から独立した空間で長時間過ごすことになるため、孤独感を味わいがちです。特に自己管理が難しい小学生以下の子どもは、親の姿がみえない時間を長く過ごすのを嫌がることが多いかもしれません。
リビング学習は、親や兄弟姉妹が同じ空間にいることで子どもは安心して勉強できます。会話がなくても、直接姿がみえなくても、家族のお互いの気配を感じながら過ごせるため、精神的に落ち着いた状態で勉強に取り組めるのです。
親が見守りやすい
リビング学習は、子どもの学習状況を親がそばで見守れるという大きなメリットがあります。どのあたりを進んでいるのか、得意な問題や苦手な問題は何かなどを把握しやすいため、勉強のサポートがしやすいです。家事をしながら子どもの様子を見て、勉強に集中しているかを確認したり、必要に応じて声をかけたりして子どもの学習習慣をしっかりサポートできます。
子どもにとっても、分からない問題にぶつかった時すぐに親に助けを求められるため、学習にあたって精神的な安心感も生まれやすいです。勉強がスムーズに進められるでしょう。
親子でコミュニケーションを取りやすい
リビング学習のメリットは勉強面だけではありません。子どもの横や同じ空間で親が読書や勉強など、何かに集中している姿を見せると、子どもに勉強の大切さを自然な形で伝えることになります。「勉強しなさい」と叱るよりも効果的でしょう。
子どもが親の読んでいる本や勉強内容に興味を覚え、遊びとはまた違うコミュニケーションにつながるかもしれません。リビング学習は、子どもが前向きに知識を得ようとする環境を整えやすいとも言えます。
光熱費を節約できる
リビング学習は勉強時間中もリビングで過ごすため、個室の光熱費がかかりません。リビングの照明や冷暖房だけで済むので、電気代などが節約できるのもメリットです。
リビング学習のデメリット
多くのメリットがあるリビング学習ですが、当然デメリットもあります。メリットとのバランスを考えるためにも、デメリットについても把握しておくことが大切です。
リビング学習の主なデメリットを4つ紹介します。
子どもが集中しにくい場合がある
本来、リビングは家族が集まる団らんの場所であり来客をもてなす場所なので、集中力を必要とする学習に向いた環境とは言えません。テレビの音や他の家族の話し声などが気になって勉強に集中できず、子どもによっては、かえって学習効率が落ちる可能性があります。
リビング学習を採用する際は、子どもの勉強時間にはテレビをつけられないなどの制約が出ることも考慮して検討しましょう。
親がつい干渉したくなることも
リビング学習は、子どもが勉強している様子を把握しやすい一方で、様子が分かるあまり親が干渉したくなりやすい環境であることも事実です。子どもの様子が気になってつい口を出してしまうと、子どもが自分のペースで学習を進めるのが難しくなり、自発性が育ちにくくなる可能性があります。
干渉がエスカレートすると、場合によっては子どもが勉強嫌いになってしまったり、個室にこもって勉強しているかどうかも分からなくなってしまったりしますので、親はあくまでも「見守る」ことに徹する意識を持つことが重要です。
リビングが雑然としやすい
リビング学習を取り入れると、学校の教科書やノート、塾の教材、文房具などもリビングに置くことになります。基本的に細かいものが増えるほど散らかりやすくなるので要注意です。
リビング学習スペースがリビングの端にあっても、整理整頓できていないとリビング全体が雑然とした印象になります。どのくらい整然としていたいか、家族の方針にもよりますが、収納スペースの確保や片付けを習慣づけるのが必要になるかもしれません。
兄弟姉妹でスペースの取り合いになる場合も
あくまでもリビングの一角を使うリビング学習の場合、個室のように広くなく専用でもないため、兄弟姉妹がいるとスペースの取り合いが起こる可能性もあります。気に入った場所を譲りたくなくて喧嘩になったり、教科書や文房具の収納場所の割合がなかなか決まらなかったりすることも少なくありません。
子ども全員がそれぞれ学習に集中できるよう、適度にスペースを区切る、時間を決めて譲り合いながら使うといった工夫をするよう親が指導する必要があります。
リビング学習に必要な広さを判断するポイント
リビング学習を取り入れたいけれど、狭い間取りだとスペースを確保できないかもしれない―そんな不安を感じる方もいるでしょう。しかし、レイアウトによって適した広さは変わりますので、「広さ」よりも「使いやすさ」を重視しましょう。
ストレスなくリビング学習ができるスペースをつくるために押さえておきたいポイントを2つ紹介しますので、参考にしてください。
リビング学習に必要な家具が配置できる?
リビング学習に必要な家具として、デスクもしくはカウンター、椅子、教科書などの本を収納する棚やボックスなどが挙げられます。スペースが限られていたとしても、これらの家具のサイズや配置を調整することで、快適な学習環境をつくることは可能です。
一般的な子ども用学習デスクの寸法は幅100cm前後、奥行き60cm前後ですので、子どもの人数に合わせてデスクやカウンターのサイズを検討してください。
リビング内の動線がスムーズ?
リビング学習のメリットを生かしたいと思っても、リビング学習スペースの確保によってリビング全体の動線が悪くなってしまっては本末転倒です。毎日過ごす場所ですから、スムーズに動けるレイアウトでなければかえってストレスがたまってしまいます。
家族がくつろぎ、コミュニケーションを取るというリビングの用途と、勉強するというリビング学習スペースの用途を両立できるよう、通りやすさや使いやすさのバランスをよく考えてレイアウトしましょう。
狭くても大丈夫!コンパクトなリビング学習スペースがつくれる間取り4選
リビング自体が広くないからとリビング学習の採用をかんたんに諦めるのはもったいないです。個室のような広さを確保しなくても、レイアウトや家具を工夫して、コンパクトにまとめれば快適な学習スペースを作れることも多いです。
狭くてもリビング学習スペースをつくれる代表的な間取りアイデア例を紹介します。
間取りアイデア1:壁面を利用する
リビングの壁面に沿ってカウンタータイプのデスクを設置したリビング学習スペースは、リビング全体の動線をほとんど妨げることがありません。ダイニングテーブルやソファのレイアウトが比較的しやすいのも特徴です。
壁面に窓があれば採光を確保できる上に、壁面を使って造り付けの棚を設置すれば本棚を置くスペースも不要です。カウンターの長さは使用する人数に合わせて決めてください。
間取り提案実例:壁面を活用したワークコーナー
間取りアイデア2:キッチン腰壁を利用する
キッチンの腰壁の背面に造り付けのカウンターデスクを設置する方法も、コンパクトなリビング学習スペースのアイデアとしておすすめです。キッチンを挟んで親子が近い距離にいるため、親がサポートしやすく子どもも質問しやすいメリットがあります。
キッチンの腰壁は床から1m前後の高さがあり、椅子に座った時目の前に壁がくるので、時間割表などを貼っておくのも便利です。ただし、音が聴こえると集中しづらいタイプの子どもには不向きなので、別の方法を検討するとよいでしょう。
間取り提案実例:対面キッチンの腰壁にカウンターデスクを置くアプローチ
間取りアイデア3:隣接した部屋やスペースを利用する
リビングと隣接する和室やリビング内の小上がりスペースを、リビング学習スペースとして活用するのもひとつの方法です。くつろぎの場所であるリビングとの使い分けができて、勉強に集中しやすいスペースになります。来客時も、ドアやパーテーションで隠せばいいだけなので、もし散らかっていても慌てて片付ける必要がありません。
学習スペースを比較的広く確保できるため、親子や兄弟姉妹など複数人でも使いやすいでしょう。
間取り提案実例:キッチンからも存在を感じられる和室のプラン
間取りアイデア4:階段下スペースを利用する
リビングにオープン型の階段を設けるリビング階段は、階段をリビングに取り入れることでリビングを広くできる間取りとして人気があります。このリビング階段の下はデッドスペースになりがちなので、リビング学習スペースとして活用すると便利です。
スペースの有効活用ができるだけでなく、リビング内ながら家族が集まる場所から少し離れているため、勉強に集中しやすい環境を整えられます。階段幅の分だけ奥行きが取れるので、意外に広々とした空間で教科書や文房具などの学用品も収納しやすいでしょう。
間取り提案実例:オープンキッチンからも見える位置の階段下に作業スペース
狭い間取りでリビング学習スペースをつくるポイント
狭い間取りだとリビング学習スペースをつくるのは難しいというイメージがあるかもしれませんが、前述したように、壁面や二ッチスペースを上手に活用すればスムーズに取り入れられるケースも多いです。
最後に、狭い間取りでもリビング学習スペースをつくるためのポイントを紹介します。取り入れられそうなものからぜひ活かしてみてください。
調光式照明器具で部屋の用途に合わせた雰囲気づくりを
本来団らんの場所であるリビングには、リラックスできる電球色(オレンジがかった色)の照明器具を設置するのが一般的です。しかし、電球色の光は昼光色(白っぽい光)よりも視認性が低いため、読書や勉強など細かい文字を長時間見る作業には向きません。
リビングの全体照明は、調光式の照明器具にしておくと便利です。くつろぎたい時は電球色、勉強に集中したい時は昼光色や昼白色(電球色と昼光色の中間色)をリモコンひとつで調整できます。さらに、リビング学習スペース専用のスポットライトやデスクライトを設置して、手元の明るさを確保しておくとよいでしょう。
収納場所は固定しない
教科書や文房具などの学用品を収納する場所は必要ですが、あえて固定せず、キャスター付きのワゴン収納ボックスを使って移動できるようにしておくのがおすすめです。カウンターやデスクの幅が小さく、勉強の内容によっては資料を広げるためにダイニングテーブルなどを使う場合、ワゴン収納だと学用品や資料の持ち運びが楽にできます。
学習後の片付けも素早くできるので、子どもに片づけを習慣づけさせやすくなるでしょう。
いざという時は区切ることができる位置にする
リビング学習スペースが家族の目に入る位置にあると、目が届きやすい反面集中したくても難しい場合があります。せっかくリビング学習スペースをつくっても、使わなくなってしまったらスペースが無駄になってしまうでしょう。
勉強に集中しやすい環境にできるよう、間仕切り用カーテンやパーテーションで区切れるようにしておくと便利です。視線をカットできればより集中しやすくなります。リビングのインテリアを壊さない色や素材のカーテンやパーテーションを選ぶことが大切です。
まとめ
リビング学習のメリットとデメリット、狭い間取りでもリビング学習スペースをつくるためのポイントなどを中心にお伝えしてきました。
個室よりも親子のコミュニケーションが取りやすいリビング学習は、工夫次第で広いスペースがなくても設置できます。リビングの動線を妨げず、子どもの学習意欲が高まるようなレイアウトにするとより大きなメリットを感じられるでしょう。
ただし、家族の気配や生活音を感じると集中しにくいタイプの子どもには無理をさせないことが大切です。
この記事を参考に、狭い間取りでも取り入れられるリビング学習スペースづくりを進めてみてください。