子育て世代のママ・パパで教育費の準備に悩んでいる方は非常に多いです。大学入学までに用意しなければならない教育資金は、子どもの将来を左右する重要な決断にもなります。教育費を準備する手段でよく注目される学資保険はコツコツお金を貯めていくのに便利な選択肢ですが、デメリットもあります。
著者は大手生命保険会社で資産運用業務を経て、コンサルタントとして多くのご家庭の資金計画を支援してきました。この記事では、学資保険のメリット・デメリットを分かりやすく比較しているので、疑問や不安に思われている部分が少しでも解消すれば幸いです。ぜひ、ご家庭に最適な教育資金準備の方法を一緒に見つけていきましょう。
子どもの教育資金、いくらかかる?
子育て世代にとって、教育費は大きな問題です。子どもが生まれたら、早めに教育資金の準備を考えるべきとわかっていても、いくら必要なのかを知っておかないと、どのように準備していいのかもわかりませんね。何歳ぐらいに一番お金がかかるか、公立に行くか私立に行くかによってどれぐらいの費用の差があるのでしょうか。
小学校入学前〜大学卒業までにかかる教育費(概算)
全て国公立 | 約1,000万円 |
全て私立 | 約2,400万円 |
大手生命保険会社のフコク生命によると、幼稚園・小学校・中学校・高校・大学卒業までの19年間、すべて国公立校に行った場合、約1,000万円かかります。すべて国公立校に行く事になれば教育資金は少なくて済みますが、ある時期だけ、あるいは全部を私立校に行った場合はもっとかかります。全部を私立校に行った場合は約2,400万円と、国公立校の倍以上となります。さらに、受験のための塾代、地方から都市部の大学に通うために一人暮らしをすると、もっとかかる事になります。
参考:フコク生命 教育費は平均いくら?幼稚園から大学までに準備するべき総額とは
学資保険とは?
学資保険とは、教育資金を準備するための貯蓄型の保険を言います。毎月決められた保険料を払い込むことによって、成長の節目に祝金や満期保険金を受け取ることができる保険です。
日本生命の「ニッセイ学資保険」、第一生命の「こども応援団・ミッキー」、住友生命の「こどもすくすく保険」など、どこの生命保険会社も学資保険は、12歳~15歳ぐらいまでに保険料の払い込みが終わり、大学に入学する18歳から満期保険金を受け取るという内容です。保険料払い込み期間中でも祝い金を受け取れるという保険もあります。
また、保険期間に契約者である父または母が死亡・高度障害になった場合、保険料払い込みを免除され、死亡給付金が支払われます。満期保険金は予定通り受け取ることができます。
参考:
ニッセイ学資保険
こども応援団・ミッキー
こどもすくすく保険
学資保険のデメリット・メリット
値上げが続く授業料、ママ・パパの給料がなかなか増えていかない日本の経済事情を考えると、早くから教育資金をどうするか考えないといけなくなっています。そのため、資産形成の手段として学資保険を真っ先に検討する方が多いのではないでしょうか。学資保険に加入する前に学資保険のデメリット・メリットをしっかり押さえておきましょう。
学資保険のデメリット
必要な時に自由に引き出せない
学資保険は子どもの成長に合わせて、節目に満期保険金が出る仕組みになっています。
子どもの通う学校が当初の予定通りであれば、タイミング良く保険金が出て助かりますが、進学がいつも計画通りになるとは限りません。子どもの進路は親があらかじめ決められるものではなく、例えば中学は公立と予定していても、子どもが私立を選んだり、近所に良い私立校があって行かせたくなったら、予期せぬ高い授業料を払う事になります。
不確定要素がある中で、生まれてすぐ満期保険金を決めなければならないのは学資保険のデメリットです。学資保険は15歳や18歳など、決められた年齢にならないと満期保険金が出ない仕組みです。祝い金があったとしても足りずに学資保険を解約することになる可能性もあります。
途中解約すると元本割れするリスクがある
途中解約すると、解約返戻金を受け取れますが、その解約返戻金がそれまで支払ってきた保険料総額を下回る可能性があります。
特に契約してから間もない頃に解約すると、大きく元本割れする可能性があります。契約初期は保険会社にとってみれば契約にかかった経費を回収する時期です。経費分は積み立てられず戻って来ない事が大きく元本割れする理由です。学資保険に限らず保険は初期の解約はデメリットが大きくなります。途中解約はなるべくしない方が良いという事です。
そのためには毎月の支払保険料を無理のない金額にしておくのが大切です。支払う保険料を負担に感じたら、保障内容を低くして払済保険に変更できる場合があります。
インフレリスクがある
ここ30年ほどはデフレが続き、インフレの心配はなかったのですが、最近何もかも値上がりしています。値上がりするという事はお金の価値が下がるという事です。
学資保険の契約時は満期保険金の金額に満足していたとしても、インフレになるとお金の価値が目減りして、18歳の満期保険金額を受け取る時期になると、授業料が値上がりし、その金額では授業料をカバーできないという事も起こります。契約期間は契約時の予定利率で運用される仕組みとなっている事がインフレ時はデメリットになります。将来金利が上昇すると予想できるなら、別の投資信託などの方が多くのリターンを得ることが出来る場合もあります。
学資保険のメリット
保護者に万が一の事が起こった場合の保障がある
学資保険は契約者である父または母が死亡・高度障害になった場合、死亡給付金が出ます。
死亡給付金はそれまでに支払ってきた保険料総額相当金額になり、時期により給付金額が異なります。さらにそれ以降の保険料支払いが免除されます。祝い金、満期保険金は予定通り受け取れます。
このように、学資保険はいつ万が一の事が起こっても、子どもの教育資金は保障されます。これは学資保険の最も大きなメリットの一つといえます。
生命保険料控除の対象になる
学資保険は生命保険料控除の対象となります。
生命保険料控除とは、その年に払い込んだ保険料総額に応じて、課税所得からある一定の金額を差し引いて、所得税・住民税の負担を減らすことが出来る制度です。年末調整や確定申告で馴染みがある制度ですね。学資保険の保険料もこの生命保険料控除を受けることができます。他の貯蓄商品ではこのような制度を利用することはできないので、学資保険ならではの魅力の一つです。
ただし、保険料控除を受けるには上限があります。必要以上にたくさん保険に加入している部分は、適用されないため注意が必要です。
計画的に子どもの教育資金を準備できる
貯蓄の必要性を感じる方は多いですが、教育資金として資金を確保していくことは、任意の貯蓄ではなかなか続かないものです。
学資保険は銀行引き落としで毎月決まった日に引き落とされますから、忘れる事もなく自然に計画的な教育資金の準備が出来ていきます。「貯蓄は苦手」な方でもしっかり教育資金が準備できる点が安心です。
学資保険以外で子供の教育資金を準備する方法
終身保険
終身保険とは被保険者が死亡するまで、保障が続く保険です。
終身保険の中でも低解約返戻金型終身保険は、保険料払い込み期間が終了するまでは解約時の解約返戻金は元本割れする保険ですが(70%前後が多い)、保険料払込期間終了後に解約した場合は、支払い保険料総額を上回る解約返戻金が受け取れる、つまり返戻率100%以上となる事が多い保険です。月々の保険料は割安で、保険料払込期間終了後に解約した場合は通常の終身保険と同じぐらいの解約返戻金を受け取れます。
保険料払込を15歳ぐらいの時点で終わらせる設計にすれば、子育てに忙しい時期に保険料が安く抑えられて、15歳以降の最も教育資金が必要になる時期に解約して解約返戻金を受け取る計画を立てることができます。割安の保険料で死亡保障を受けながら計画的に教育資金を準備できます。学資保険の契約時に満期保険金はこの年齢で受け取るという事を、決めにくいと感じることもあるでしょう。それは学資保険のデメリットでもあります。そんな方には終身保険がおすすめです。
個人年金保険
個人年金保険は貯蓄型の保険なので学資保険のように使えます。ある年齢から年金として受け取る設計の保険で、主に老後資金のための保険です。
子どもが15歳のときにお金が必要な場合、そのときに年金を受け取れる契約にすると、その時点で一時金で受け取れば教育資金として使えます。一時金で受け取るか毎月年金として受け取るかは選択できる事が多いです。保険料支払い期間中に契約者が死亡・高度障害になった場合は、死亡給付金が支払われるので、死亡保障もあります。年金を受け取る年齢になった時点で、ある程度貯蓄もできていて教育資金に充てられるなら、年金として受け取ってもいいでしょう。年金は教育資金の一部としても良いし、子育てが終わった後も受け取れるので、契約者の生活資金としても使えます。
学資保険はその時その時の経済状態に関係なく最初に決めた設計通りで、満期保険金を年金として受け取る選択はできないというデメリットがあります。柔軟に教育資金を準備したい方に個人年金保険はおすすめです。
NISA
NISAは投資信託や株式などを対象とする個人のための税制優遇制度です。
投資や相場について知識があればNISAを教育資金の準備として活用することができます。ただしリスクも伴い、元本割れすることがある事を理解して行うことが大切です。上手にポートフォリオ運用ができれば、大きな投資収益が見込め、学資保険のデメリットでもあるインフレにも対応できるので、教育資金作りにも向いています。
どんな人が学資保険を検討すべき?
学資保険は次のような人が検討してみるのが良いとされています。
子供の教育資金の負担が大きくなる方
子どもが生まれてすぐは、無事に生まれてきただけで嬉しいものですが、時を経てスポーツ選手にしたいとか、こういう学校に行ってほしいとか期待が生まれます。
また、父母の給料の伸びが見込めない状況になる事もあります。そんな場合でも学資保険は無理なく教育資金を準備する心強いツールになります。ただし、もし予想以上に早く教育資金が必要になって解約すると、元本割れする可能性があるデメリットと合わせて検討するのがいいでしょう。
貯蓄するのが苦手な方
教育資金を計画的にコツコツ貯めていくことは大切だとわかっているものの、長期にわたると途中で続かなくなる場合もあります。学資保険はそんな方も毎月銀行口座から保険料が引き落とされる事で、強制的に支払うことができます。その仕組みをうまく活用して長期にわたって準備していくことができます。
自分に万が一のことがあったらと心配な方
子どもを一人で育てている方なら、もし自分に万が一の事があったら、子どもはどうなるんだろうと不安に思う事があるでしょう。一人親でなくても自分が大黒柱で自分に何かあったら家計の収入が大きく減ってしまうと心配になる方もいます。
そんな時はどんな事が起きても教育資金だけは必ず用意できる学資保険は入っておく価値があります。支払い保険料は免除され死亡給付金が出て、祝い金も満期保険金も受け取れるので、万が一の時を考える方にはぴったりです。
子どもが生まれて間もない方
学資保険は貯蓄保険なので支払う期間が長いと、支払い保険料が安くすみ、解約時も元本割れするリスクも少なくなります。
子どもが生まれて間もない時期に学資保険を始めることが最もおすすめです。ただ、あまりに早いので親もよくわからないまま学資保険を設計することになってしまうというデメリットもあります。教育資金が必要になるまで、あまり時間がない方は他の金融商品を検討するのがいいようです。
学資保険に関するアンケート結果
ナビナビ保険のアンケート結果によると学資保険を契約する人の多くは、30代で月額保険料が5,000円以上8,000円未満で加入しています。加入時の子どもの年齢は0歳が多く、生まれてすぐ学資保険を検討する風潮が定着しています。
また、満期保険金を受け取る時期はやはり大学入学時で、準備する目標金額は150万円~200万円が最も多いという結果です。大学入学時に必要になる金額は約231万円(参照:日本政策金融公庫「令和3年度教育費負担の実態調査結果」)なので全部はカバーできなくても、学資保険が入学のために役に立つという事は言えるでしょう。
参考:学資保険のデメリットとは?いらない・おすすめしない理由、必要性を解説 | ナビナビ保険
学資保険を選ぶ際のポイント
返戻率
前出のアンケートでも、学資保険を選ぶ際のポイントとして返戻率が決め手という人が多いという結果でした。
返戻率とは、支払った保険料の総額に対して、受け取る保険金額がどれぐらいの割合になるかを示したものです。100%以上だと支払った以上の金額を受け取れるので目安になりますね。学資保険はほとんどが返戻率100%以上です。ただし、払い込み期間やプランによって違いが生まれます。
満期保険金を受け取るタイミング、払い込みが終わるタイミング、いくら満期保険金額をもらえるかを優先させ、なるべく返戻率が大きいプランを選ぶようにするといいでしょう。
加入するタイミング
子どもが生まれたら、「学資保険」と思い浮かぶぐらい、学資保険は教育資金の準備になくてはならないものになってきました。
契約者である父または母の年齢が低いほど支払う保険料は安くなります。加入するタイミングは生まれてすぐの方が良いでしょう。妊娠中から加入することもできます。子どもが2~3歳の時に学資保険に入ったとしても、遅くはありません。返戻率を高くするために、祝い金をもらうタイミングを遅くしたり、もらう回数を少なくするといいでしょう。
毎月の保険料
毎月の保険料は、満期保険金をいつ、いくら受け取りたいかによって決まります。無理なく支払い続けられる保険料なのかという観点からも考える必要があります。毎月払いではなく半年払いや年払いにすると、毎月払いより割安なので、返戻率は高くなります。
保険金を受け取るタイミング
学資保険に加入することを検討している方の多くは、18歳の大学入学時にかかる費用を想定して加入するようです。それでも塾・予備校などの費用も考えるともっと早めに教育資金が必要になる場合もあります。そんな時に祝い金がもらえるとその費用に充てられます。祝い金を受け取らず据え置くこともできます。
子どもの進路は想定した通りになるとは限らないので祝い金をもらえる仕組みは助かります。