戸建て住宅には注文住宅と建売住宅があり、マイホームを購入する方は、どちらがいいか迷うのではないでしょうか。一から家づくりに関われる注文住宅。建物と土地をセットで購入する建売住宅。どちらにもメリットとデメリットがあるので、購入後に後悔しないためにも、違いをしっかり把握しておくことが大切です。
この記事では、価格差や入居までにどれくらいかかるかなど、注文住宅と建売住宅の違いを明らかにします。それぞれのメリット・デメリットなども詳しく解説していますので、ぜひ最後までお付き合いください。
注文住宅と建売住宅の違いは?
注文住宅では、これから購入する土地や既に所有している土地にハウスメーカーや工務店と一から家を建てていきます。これに対し、建売住宅は土地と建物がセットで販売されており、建物は完成している状態がほとんどです。どちらがいいか決めかねているなら、両者の違いを知ることがマイホーム購入の第一歩になります。
価格差:建売の方が割安
一般的に、建物の価格は建売住宅の方が割安です。以下は2022年度の土地付き注文住宅と建売住宅の取得にかかった総額の平均で、価格差は約1,200万円でした。
▼土地付き注文住宅と建売住宅の購入資金(全国平均)
土地付き注文住宅 | 5,436万円 |
建売住宅 | 4,214万円 |
価格差 | 1,222万円 |
出典:国土交通省「令和四年度住宅市場動向調査」
この調査結果からも建売住宅のほうが安いことが分かりますが、決して品質やグレードが劣るというわけではありません。次のような費用が注文住宅と建売住宅の価格差に影響を及ぼしています。
- 仕入れにかかる費用
- 打ち合わせにかかる人件費
- 仮設費用
- 仲介手数料
建売住宅のなかでも分譲地に同じ規格の住宅を何棟も建てる場合、同じ建築資材や設備を大量に仕入れることで、コストを削減できます。時間がかかる間取りの打ち合わせも、建売なら必要ありません。建物の形や間取りを単純にして工期を短縮すれば、仮設トイレや足場のレンタル費用も抑えられます。また、不動産会社と直接取引する売主物件は仲介手数料も発生しません。このような理由で、建売の方が費用を安く抑えられることが多いです。
立地:注文住宅は土地からこだわれる
注文住宅と建売住宅では、土地選びの自由度にも大きな違いがあります。
注文住宅は、これから購入する土地もしくは既に所有している土地にハウスメーカーや工務店と建築工事請負契約を交わして家を建てます。一方、建売住宅は売主(不動産会社など)と売買契約を交わして購入する土地付きの戸建て住宅です。自由度の高さでいえば、注文住宅に軍配が上がります。
なお、注文住宅を建てる土地には建築条件付き土地と建築条件なしの土地があります。建築条件なしの注文住宅は建築を請け負う会社を選べますが、建築条件付き土地では施工会社を選べません。
建売住宅はほとんど家が完成している状態での販売になりますが、建物が未完成のケースもあります。たとえ建物が未完成であったとしても建築確認申請は済んでいるので、間取りの変更はできないことに注意しましょう。
設計や間取り:注文住宅は自由度が高い
設計や間取りの自由度も、注文住宅と建売住宅の大きな違いです。
注文住宅は土地を取得したあとに家を建てるので、間取りはもちろん、外観や内観を自由にデザインすることができます。ただし、注文住宅にも種類があり、設計の自由度に若干の違いがあります。
- フルオーダー住宅:間取りやデザイン、使用する材料に至るまで全て施主が決められる完全自由設計の注文住宅。
- セミオーダー住宅:基本的な仕様は決まっていて、一部を施主が選択できる注文住宅。フルオーダーに比べて制限はあるものの、コストを抑えつつ、こだわりも追求できる。
- 規格住宅:建築会社があらかじめ用意した規格に沿って建てる注文住宅。一定の規格のなかから間取りやデザインを選ぶため、コスト削減や工事期間短縮といったメリットがある。
入居までの期間:建売は入居までが早い
注文住宅と建売住宅は入居までの長さにも違いがあり、入居までの期間が短いのは建売住宅になります。
注文住宅では、土地探しにかかる期間が平均4〜12ヶ月程度。家が建つまでに、1年以上かかることも珍しくありません。一方、建売住宅は内覧から3ヶ月、契約から1ヶ月程度での入居が可能な場合もあります。
建設中の様子:建売は建設中の様子が見られない
建設中の状況を現場で確認できるか否かも、注文住宅と建売住宅の違いのひとつです。
注文住宅では施主が建築現場を見学できるので、気になる点があれば責任者に質問もできます。家が建ってからだと地盤や基礎、柱、壁などの構造躯体は見えなくなってしまい、欠陥や不備に気づけません。設計から家づくりに関われる注文住宅は、家への愛着もひとしおです。
注文住宅と建売住宅のメリット・デメリット
注文住宅と建売住宅の主な違いを説明しましたが、それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらがいいか迷われている方はメリットだけでなく、デメリットも知ったうえで比較検討することをおすすめします。
注文住宅のメリット・デメリット
注文住宅は、建築会社、間取り、デザイン、設備を自由に決められる戸建て住宅です。
注文住宅のメリット
注文住宅の大きなメリットには主に以下の5つがあります。
土地探しからこだわれる
注文住宅は土地と建物を別々に購入するので、立地条件にもこだわることが可能です。交通の利便性はもちろん、公共施設の有無や周辺環境から家族のライフスタイルに合った土地選びが実現します。
また、土地の広さや形状は間取りに影響を与えますし、地盤の状態が悪い土地は住宅の耐震性や耐久性に影響を及ぼす可能性もあります。新築工事の前には地盤調査や地盤改良を行いますが、土地探しからスタートすれば災害リスクの低い土地を選ぶことも可能です。
建築会社を選べる
建築会社が選べるのも、注文住宅ならではのメリットと言えるでしょう。建築会社といっても、全国展開しているハウスメーカーから地域密着型の工務店、建築士が設計やデザインを行う設計事務所まで様々な種類があります。
間取りの提案力やデザイン、住宅性能(耐震性・断熱性・気密性など)の基準にも違いがあるので、後悔しないためにも十分に調べておきましょう。
自由な設計ができる
注文住宅最大のメリットといえば、間取りの自由度の高さです。家事動線に配慮した間取りや趣味をベースにした間取りなど、家族のライフスタイルや好みを反映できる点は建売住宅とは大きく違います。
暮らしやすさを追求した間取りを実現できる注文住宅に対し、既に間取りが決まっている建売住宅では家に合わせた生活をしなければなりません。建売住宅は子供二人を想定した部屋数で設計されていることも多いですが、注文住宅であれば家族の人数に合わせた部屋数を設けることも可能です。
建築仕様や住宅設備も選べる
外観や内装のデザインや住宅設備を自由に決められるのも、注文住宅の大きなメリットです。外壁や屋根材など外観に関わる部分から、壁紙や床材、窓や扉に至るまで、すべて好みに合わせて選べます。さらに、暮らしを快適にする高性能な設備も導入できるため、満足度の高い家づくりが叶うでしょう。
工事過程を確認できる
注文住宅では、基礎や骨組みをつくる段階から立ち会い可能です。耐震性にも関わる大事な部分なだけに、現場で確認しておくと安心感が違います。施主が見ているとなれば現場にも良い緊張感が生まれますし、手抜き工事の防止にもつながります。
注文住宅のデメリット
注文住宅のデメリットは、4つあります。
総費用が高くなる
注文住宅は建売住宅に比べて工期が長く、総費用が上がりがちです。注文住宅では施主の希望に合わせた家をつくるため、何度も打ち合わせを行わなければなりません。間取りや仕様が決まっている建売住宅に比べたら、時間も人件費もかかるのは当然でしょう。
また、注文住宅はデザインや設備の自由度も高く、理想を追求した結果、予算がオーバーするケースも珍しくありません。
入居までの期間が長い
注文住宅は、入居までの期間が長い点もデメリットです。
土地探しに建築会社探し、間取りの打ち合わせ、外観や内装を決めるための時間などが必要で、こだわればこだわるほど完成までの期間が長くなります。
一方で、土地探しからサポートしているハウスメーカーや工務店も多くあるので、少しでも早く入居したい場合は相談してみると良いでしょう。
完成後のイメージがつきにくい
注文住宅の場合、図面上で間取りを決めてから家を建てます。しかし、図面しか見ていないと完成した家をイメージしにくく、住み始めたら生活しにくかった、想像以上に狭かったなんてケースもよくあります。
外壁や内装、設備もカタログやサンプルだけ見て決めるとイメージ違いが起こりがちです。完成予想図を立体的に表したイメージパースやショールームにある実物を確認しておくと、完成前後のギャップも減らせるでしょう。
資金計画が複雑
注文住宅は支払いやローンの手続きも、建売に比べたら少し面倒に感じるかもしれません。注文住宅はまず、土地と建物を別々に購入します。また、建物の代金は複数回に分けて払うのが原則で、次のようなタイミングで支払いが発生します。
▼建築費用を支払うタイミング
支払い時期 | 費用 |
契約時 | 契約金 |
着工時 | 着工金 |
上棟時 | 中間金・上棟金 |
完成時 | 竣工金 |
住宅ローンは建物が完成してからでないと、融資を受けられません。融資実行前の着工金や中間金を用意できない場合は、つなぎ融資や分割融資を活用するという方法もあります。
つなぎ融資:住宅ローンが実行される前に発生する費用を支払うため、一時的に利用する融資
分割融資:本来、引き渡し後に実行される融資を複数回に分けて実行する融資方法
建売住宅のメリット・デメリット
建売住宅は不動産会社などが仕入れた土地に住宅を建てて、土地と建物をセットにして販売する住宅です。
建売住宅のメリット
建売住宅には、5つのメリットがあります。
価格を抑えやすい
戸建て住宅は注文住宅に比べて、価格を抑えやすいというメリットがあります。
価格が安いのは品質が悪いからというわけではなく、建売住宅を建って、購入されるまでにかかる費用が抑えられるからです。仕様が統一されている建売住宅は資材をまとめて購入することで、仕入れ価格が抑えられます。また、施主の希望をヒアリングして間取りやデザインに反映する注文住宅と違い、効率よく家づくりを進められるため、工期や人件費も削減されています。
入居までの期間が短い
建物が既に完成している建売住宅は売買契約や住宅ローンの手続きが済み次第、すぐに引っ越しもできます。
一方、未完成の建売住宅は工事完了を待ってからの入居となり、工事期間は物件によって様々です。完成物件に比べると入居までの期間は長くなりますが、いずれのケースも注文住宅よりはスムーズに入居できます。
購入後の生活をイメージしやすい
建売は購入前に実物を確認できるため、住んでからギャップを感じることも少ないでしょう。
既に住宅が完成していれば間取りや内装、設備も事前に確認しておけますし、建物が未完成でも同じ区画内に完成している物件があれば見学できる場合があります。イメージ違いによる後悔が少ないのも、戸建て住宅のメリットです。
購入手続きがスムーズ
注文住宅は土地と建物、それぞれ契約をしなければなりませんが、建売住宅では土地と建物の代金を分けて払う必要がありません。住宅ローンも1本で済むので、申し込み手続きもスムーズです。
街が整備されている
建売住宅のなかでも「大規模分譲住宅」は街全体が整備されており、統一感があります。大規模分譲地とは、不動産会社が所有する広大な敷地に数十棟もの住宅が建ち並ぶエリアです。日当たりを配慮して一区画を広く取ったり、道路や公園を整備したり、安全で暮らしやすい住環境が整備されているのがポイントです。
建売住宅のデメリット
建売住宅には、4つのデメリットがあります。
設計の自由度が低い
建売住宅はすでに決められた間取りとデザインの中から選んで購入するので、注文住宅に比べて自由度は低めです。独自性の高いデザインを重視する方には不向きで、個性的な家づくりは叶いません。
しかし一方で、建売では広く一般受けする間取りとデザインが採用されていることが多く、売却時に受け入れられやすいというメリットもあります。資産価値を維持するという面ではポイントになるでしょう。
また、建築前に購入した場合は、屋根や外壁、床材、玄関扉、キッチン、ユニットバスなどの色をセレクトできる物件もあります。
外観に個性がない
分譲地に同じ規格の住宅を建てることが多い建売住宅では、似たり寄ったりの家が立ち並ぶ傾向があります。
街並みに統一感がある一方で、家の外観にも個性がありません。隣接する住宅同士、外観が被らないよう多少デザインを変えて販売するケースも増えていますが、外観デザインも重視したい!という方は現地で外観を確認しておくことをおすすめします。
施工会社を選べない
すでに工事が済んでいる、もしくは建築中の建売住宅は施工会社を選べません。
ただし、保証やアフターサービスの内容は会社ごとに違います。住んでから後悔しないためにも、施工会社の実績や評判を事前に確認しておくことも大事です。
工事過程を確認できない
住宅が完成している建売住宅は家が立つ前の土地の状態、基礎や骨組みの確認ができず、構造に手抜きがあったとしてもわからないままです。
建売住宅は住宅の性能より、購入率を上げるために平均的な設計や見栄えを重視する傾向があります。コストを抑えるために工事を急いだり、資材の質を落としたりして欠陥工事が起こる事例もあると言われています。一部、地盤調査報告書や施工写真を提供している建築会社もあるので、地盤や施工に不安が残る場合は問い合わせてみると良いでしょう。
注文住宅と建売住宅、どんな人におすすめ?
最後に、注文住宅と建売住宅はそれぞれどんな人に適しているかまとめました。注文住宅と建売のどちらがいいか決めかねている方は、チェックしてみてください。
注文住宅がおすすめの人
- 設計や性能にこだわりたい人
- 建てたい工法や建築会社が決まっている人
- 独自性の高い家を建てたい人
- 土地選びから始めたい人
- 既に土地を所有している人
- 時間やスケジュールに余裕がある人
注文住宅は時間や手間がかかり、予算もオーバーしがちです。それでも間取りやデザイン、性能にこだわれるため、細部まで自分の希望を反映させた家を建てたい方に向いています。
建売住宅がおすすめの人
- 限られた予算で家を建てたい人
- 時間や手間をかけたくない人
- 引越したい時期が決まっている人
- 早期に入居したい人
- 実物を見て購入したい人
- 整備された街に住みたい人
建売住宅は完成した物件を販売するケースがほとんどで、自由度の低いところがデメリットです。工事現場を確認できないので、信頼できる会社を探すことが大前提ですが、費用を抑えたい人や子供の入園・入学や家族の転勤などで入居時期が決まっていてスムーズに引っ越したい人には最適です。
注文住宅と建売住宅には善し悪しあり!
注文住宅と建売住宅は価格差だけでなく、設計や間取りの自由度、入居までの期間など、様々な違いがあります。
どちらがいいか迷われている方は様々な視点からよく検討したうえで、総合的に判断することをおすすめします。