最近、注目を集めている1階建て住宅の平屋。
移動がラク、地震に強い、コミュニケーションが取りやすいなどの理由から平屋を選ぶ家族も増えてきました。シニア層から子育て世帯まで多くのファンを持つ平屋は、一体いくらで建つのでしょうか?
この記事では、新築の平屋を建てるのに必要な予算、建築費を抑えるコツ、平屋のメリット・デメリットなどを紹介します。平屋に関する疑問をまるごと解決していますので、平屋に住みたい方の参考になれば幸いです。
新築平屋を建てるのに必要な予算
新築平屋はいくらで建つのかという疑問を解決するために、戸建て住宅の新築にかかる費用をはじめ、平屋を建てるのに必要な土地の予算や平屋の建築費を詳しく見ていましょう。
戸建て住宅の取得にかかる価格相場
そもそも戸建て住宅は、いくらで建つのかご存知でしょうか?「フラット35利用者調査」によると、平屋を含む戸建て住宅の取得費用は以下の通りです。データには平屋以外の戸建て住宅も含まれていますが、一般的に平屋は二階建てや三階建てに比べて延床面積※1が小さくなるため、取得費用の総額も少なくて済むと考えられます。
※1 建物のすべての階の床面積の合計
エリア | 土地なし注文住宅 | 土地付き注文住宅 |
全国 | 3,863万円 | 4,903万円 |
首都圏 | 4,190万円 | 5,680万円 |
近畿圏 | 4,142万円 | 5,265万円 |
東海圏 | 3,893万円 | 4,811万円 |
その他地域 | 3,624万円 | 4,299万円 |
参考:住宅金融支援機構「2023年度 フラット35利用者調査」
住宅の取得にかかる費用相場は首都圏が最も高く、地域によって差があることもわかりました。平屋の取得費用を比較する際は全国の平均値だけでなく、地域別の相場も知っておくと業者が出す見積もりが適正か判断しやすいでしょう。
平屋を建てるのに必要な土地の予算
平屋を建てるにあたり、土地を持っていない場合は土地の購入から必要になります。では、平屋を建てる土地を取得するにはどのくらいの予算が必要なのでしょうか?
土地の価格を知るには、公的なデータを参考にする方法があります。たとえば、国土交通省のサイトには土地の価格や相場が掲載されています。以下は、国土交通省のサイトで公表している住宅地の平均価格です。
都市 | 令和6年度 地価公示平均価格(単位:円/平米) |
札幌市 | 10万7,500円 |
仙台市 | 13万9,200円 |
東京23区 | 69万6,400円 |
名古屋市 | 22万3,100円 |
大阪市 | 27万800円 |
広島市 | 11万6,000円 |
福岡市 | 20万2,900円 |
名古屋市を例にとると、1坪あたり約22万円×約3.3㎡=72.6万円/坪です。30坪で計算した場合、2,178万円が土地取得に必要な金額の目安になります。
土地の価格はエリアによって大きく変動するので、土地から購入する場合はエリアごとの価格を調べておくことが大切です。
また、土地を購入する際は土地代だけでなく、税金や諸費用がかかります。これらは合わせて土地代の5~10%くらいと見積もるとよいでしょう。
【諸費用の内訳】
- 仲介手数料
- 手付金
- 登記費用
- 印紙代(税)
- ローン手数料
税金や諸費用を忘れて予算を組むと建築費用が足りなくなってしまうので、予算を考える際は十分にご注意ください。
新築平屋の建築費用
戸建て住宅の価格相場と土地の取得にかかる費用がわかったところで、実際に平屋はいくらで建つのか見ていきましょう。平屋の建築にかかる費用は、建物本体工事費・付帯工事費・諸費用の3つで成り立っています。本体工事費が総費用の70%、付帯工事費が20%、諸費用が10%という内訳です。
- 建物本体工事費:建物本体の工事にかかる費用
- 付帯工事費:解体工事、地盤改良工事、外構工事、ライフラインの引き込み工事など、建物以外の工事にかかる費用
- 諸費用:税金、設計料、建築確認申請費用、地鎮祭・上棟式の費用など
本体工事費は、木造平屋で坪単価40万~60万円程度と言われています。坪単価は、建物の本体価格を延床面積で割った数値です。仮に25坪の平屋を建てるとして、建築費の目安は1,000万〜1,500万円となります。
ただし、建築費は工事を依頼する会社やプラン、間取りにも大きく左右されます。ローコスト住宅なら坪単価30万円程度、メーカーによっては100万円を超える場合もあります。また、付帯工事のなかでも地盤改良費や解体費は変動が大きい費用となるため、土地から取得する場合は特に余裕を持った資金計画が必要です。
新築平屋と二階建て、高いのはどっち?
平屋と二階建てでは、どちらが高いのか気になる方もいるでしょう。そこで、平屋と二階建ての坪単価と総費用を比較してみました。
平屋と二階建ての坪単価
ワンフロアの平屋は一見、安く建ちそうな気もしますが、坪単価だけ見ると二階建てのほうが安くなる傾向があります。同じ面積に同じ部屋数と設備を確保する場合、二階建てに比べて平屋は単純に2倍の敷地が必要になります。真上から見た建物をイメージしていただくと、わかりやすいかもしれません。
二階建てでは縦に部屋を重ねますが、平屋は横に部屋を並べます。キッチン、お風呂、トイレなどの設備も横方向に場所を取るため、建築面積が大きくなってしまうのです。
コストのかかる基礎や屋根の工事面積も増えて、コンクリートや型枠、屋根材の使用量も多くなります。さらに、日本では二階建てに使われる部材が広く流通していて、二階建てのほうが部材を仕入れる原価を抑えられます。以上のような理由から、平屋の建築費用の坪単価は二階建てに比べて高いのが現実です。
ただし、坪単価を決める要素は建築面積や部材の原価だけではありません。ハウスメーカーや設備によっても坪単価は異なり、ローコスト住宅なら坪単価は安くなりますし、ハイグレードな設備を採用すれば坪単価は上がります。
新築平屋の二階建ての総額
坪単価だけで考えると平屋のほうが割高ですが、総額は安くなる傾向にあります。二階建ては平屋よりスペースや追加設備が必要になる分、総費用が高くなるからです。
二階建てでは階段のスペースを設けなければならず、追加で最低でも1坪以上の広さが必要になり、階段部分の材料費や施工費も増えます。ベランダをつくる場合はベランダの工事も必要になりますし、トイレや洗面所の水回り、空調設備を1階だけでなく2階部分にも設置する場合はその分の設備費や施工費も上乗せされます。建物の大きさや間取り、使用する材料や設備にもよりますが、総額は二階建てのほうが高くなりがちです。
予算別(建築費用)・新築平屋の間取り例
平屋はいくらで建つのか、だいたい把握できたのではないかと思われますが、予算内でどのような平屋が建つのか気になる方もいるでしょう。そこで、予算別※2に建てられる平屋住宅の広さと間取り例をまとめました。
※2 ここでは、建物本体価格のみの予算としています。
予算 | 延床面積 | 間取り |
500万円台~999万円以下 | 20坪以下 | 1LDK |
1,000万円台前半 | 20〜25坪 | 2LDK |
1,500万円台〜 | 26坪以上 | 3LDK |
2000万円台〜 | 30坪以上 | 4LDK |
500万円台~999万円以下
ローコスト住宅なら、予算500万円台から新築平屋を建てることが可能です。500万円台で建つ平屋といえば、広さは20坪以下、1LDKのようにシンプルな間取りが一般的です。生活に必要な設備や寝室を最低限備えたコンパクトな構造ではありますが、移動や掃除がラクで、家全体に目が届きやすいというメリットがあります。
事務所や趣味の作業部屋にも使えますし、郊外に建ててセカンドハウスとしても活用することもできます。ただし、1,000万円未満で新築平屋を建てるのであれば、ローコストハウスメーカーを選ぶ、設備のグレードを落とすなど坪単価を抑える工夫も必要です。
こんな方にオススメ!
- 単身や夫婦二人で暮らしたい
- 趣味のスペースや小さな書斎が欲しい
- セカンドハウスを持ちたい
1,000万円台前半
予算1,000万円台前半で建てられる平屋の広さは20〜25坪程度、間取りは2LDKが中心です。夫婦もしくは家族3人に適した広さで、1フロアーのコンパクトな構造になりますが、工夫すればストレスフリーな動線も実現します。予算が増えた分、子供の成長に合わせて子供部屋を設けたり、夫婦の寝室を作ったり、リビングを広くしたりとライフスタイルに合わせた間取りも叶います。
1,000万円台前半で平屋を建てる場合もローコスト住宅がメインですが、500万円台の平屋に比べると、間取りや広さに余裕が出ます。設備や資材にも多少コストをかけられるので、快適さも追求できるでしょう。
こんな方にオススメ!
- 夫婦二人や家族三人で暮らしたい
- コストを抑えつつ、快適さも追求したい
1,500万円台~
予算が1,500万円台になると、広さ26坪以上、間取り3LDKの平屋も建てることができ、家族3~4人でも快適に暮らせます。ファミリー向けの平屋は3LDK以上の間取りが理想とされているので、夫婦+子供一人という家族構成に適した家が建てられます。廊下も作れるようになり、プライバシーに配慮した間取りが実現可能です。
ただし、少人数で暮らすなら、無理に部屋数を増やす必要もありません。延床面積を減らして、余った予算をグレードの高い設備や外構工事に回すのも一つの方法です。
こんな方にオススメ!
- 小さな子供がいる子育て世帯
- 高齢者がいる世帯
2,000万円台〜
予算2,000万円以上になると、延床面積30坪以上、間取り4LDKの平屋を建てることも可能です。4人以上の家族でも、余裕を持って暮らせる住宅を建てられるでしょう。中庭を設けたり、リビングを広くしたり、採光性が高く開放的な住まいも実現します。予算が上がれば中堅や大手のハウスメーカーのプランも選択肢に入り、性能やデザインにこだわった家づくりも叶います。
こんな方にオススメ!
- 家族の人数が多い
- 性能やデザインにこだわりがある
平屋の建築費用を抑えるコツ
ここまでの解説で、平屋がいくらで建つかの予想はできましたが、本当に予算内で収まるのか心配な方もいるかもしれません。結論から言いますと、質を落とさずに建築費を安くすることは可能です。
建物の形状をシンプルにする
建物は複雑な形状より、シンプルな箱型のほうが建築費用を抑えることができます。なぜなら、凹凸が多い建物は工事面積が増えて、外壁や屋根の材料費や施工費が上がってしまうからです。建物の形をシンプルにするとコーナー部分に使用する部材の数や工事の手間が減り、総工費を抑えられます。構造がシンプルだと、リフォームやバリアフリー化しやすいというメリットもあります。
部屋の仕切りを減らす
部屋を細かく区切らない間取りは、大幅に建築費を節約できる可能性があります。たとえば、リビング・ダイニング・キッチンを仕切らない間取りは、建具や壁材の材料費や施工費のコストカットが可能です。空間を分けたい時は、パーテーションやカーテンを設置すると良いでしょう。
延床面積を減らす
延床面積を減らして、建築費用を抑える方法もあります。たとえば、廊下は移動のためにだけに利用する空間で無駄なスペースになりがちですが、廊下を減らした間取りを作れば、延床面積を減らせます。生活動線や家事動線も短くなって、スムーズに移動できるようになり、コスト削減と合わせて一石二鳥です。
設備や仕上げ材は標準仕様から選ぶ
キッチン・洗面台・バス・トイレなどの水回り設備は高性能な商品が多く、ショールームではハイグレードな商品も展示されています。外壁や屋根、クロスやタイルなど建物の内外装に使われる仕上げ材も種類が豊富なので、機能やデザインにこだわり過ぎると予算をオーバーしがちです。水回り設備や内外装に使用される素材は、標準仕様の範囲から選ぶと追加費用が発生しません。
平屋のメリット・デメリット
平屋は安く建てることもできますが、予算だけで決めてしまうと満足度が下がる恐れがあります。建ててから後悔しないためにも、メリットとデメリットを知っておくことが大切です。
平屋のメリット
平屋には、主に5つのメリットがあります。
- 生活動線がシンプルで、家事効率が良い
- 家族同士のコミュニケーションが取りやすい
- バリアフリー化しやすい
- メンテナンス費用が安くなる
- 地震や台風に強い
生活導線がシンプル
水平移動のみで完結する平屋は、生活動線が非常にシンプルで効率的です。すべての部屋と家事スペースがワンフロアに集約しているので、無駄な動きや時間を省けます。洗濯や掃除、買い物のたびに重い荷物を持って階段を上り下りする必要もありません。上下移動がない分、足や腰にかかる負担も少なく、ストレスフリーな暮らしが実現します。子育てしながらの家事もだいぶ楽になるはずです。
コミュニケーションが取りやすい
二階建てに比べて、家族とのコミュニケーションが取りやすいというメリットもあります。平屋だからといって必ずしもコミュニケーションが増えるとは限りませんが、リビングを通ってから部屋に入るような間取りなど、部屋の配置を工夫することで家族同士のコミュニケーションを増やせます。同じフロアで過ごしていればお互いの気配も感じやすいので、小さな子供や高齢者がいるご家庭、ペットを飼っているご家庭も安心です。
バリアフリーに対応
平屋は家族の介護や車椅子の生活に適した間取りを設計しやすく、バリアフリー化しやすい点もメリットの一つです。大規模なリフォームをしなくても、手すりやスロープの設置により安全性の高い住宅に改修できます。体の不自由な人でも移動しやすく、老後も快適に暮らせるでしょう。
足腰が弱ってくると階段の上り下りが困難になり、転倒や転落のリスクも上がります。階段がなければ、乳幼児や高齢者が階段から転落する心配もありません。
メンテナンス費用が安い
住宅はある一定の年月が経過すると、メンテナンスが必要になります。二階建て以上の住宅では屋根や外壁の修理や雨どいの清掃の際に高所作業が発生し、足場の設置費用が追加されます。平屋に比べて作業面積も大きく、修繕費用の合計額は高くなりがちです。一方、平屋は足場を組まなくても作業できるケースが多く、メンテナンス費用の節約になります。
地震や台風に強い
平屋は建物の重心が低く安定しているため、地震や台風の被害を受けにくいというメリットもあります。高さがある建物は地震の揺れが伝わりやすく、建物にも強い負荷がかかります。建物に衝撃が加わると外壁にひび割れが起こることもありますが、平屋はひび割れや倒壊のリスクも低い住宅です。
平屋のデメリット
メリットの多い平屋ですが、一方でデメリットもあります。
- 広い土地を探さなければならない
- プライバシーを確保しにくい
- 防犯性が低く、不審者に侵入されやすい
- 日当たりや風通しが悪くなりやすい
- 水害発生時に垂直避難できない
広い土地が必要
平屋はワンフロアに生活空間を集約しなければならないので、必要な部屋数を設けるとなるとそれなりに広い土地が必要です。敷地いっぱいに建物を建てようとしても、建築できる建物の大きさは建ぺい率によって上限が定められています。家族が不自由なく暮らすスペースを設けるには、広い土地を探さなければなりません。また、土地と家屋が広くなると固定資産税が高くなるというデメリットもあります。
プライバシーの確保が難しい
平屋は家族間でコミュニケーションが取りやすい反面、プライバシーを確保しにくいというデメリットもあります。また、リビングに開放的な大開口を設置した住宅では、道路や隣家の位置によって通行人や隣人の視線も気になるでしょう。平屋でプライバシーを確保したければ、周辺環境を考慮した窓の配置や塀の設置など、視線を遮る工夫が必要です。
防犯性が低い
平屋は二階建て以上の住宅に比べて防犯性が低く、不審者に侵入されやすい点もデメリットと言えるでしょう。窓の位置やサイズで防犯性を高めることはできますが、防犯対策メインで家を建てると、希望のデザインを諦めなければならない場合もあります。デザインも防犯対策も諦めたくなければ、強度のある窓ガラスに変えたり、シャッターや格子を設置したり、防犯性を高める対策が必要です。防犯カメラやセンサー照明の設置、防犯砂利による対策も検討すると良いかもしれません。
採光や通風が確保しにくい
近隣に高い建物や高層ビルが密集する地域では、彩光や通風が確保しにくいというデメリットもあります。日当たりや風通しが悪いとカビや雑菌も繁殖しやすく、家の寿命に影響を及ぼす恐れがあります。住宅密集地で自然の光と風が入る住まい実現するには、窓の配置や建物の形に工夫が必要です。
ただし、光や風の入り方は時間帯や季節によっても変化するため、対策するにしても簡単ではありません。光庭や天窓を設けるとい方法もありますが、平屋を建てるなら敷地の広さだけでなく、方角や周辺環境も事前に確認しておくことが大切です。
水害には弱い
豪雨や河川の氾濫、津波などが起きた際は逃げ場を失うリスクもあります。水害や土砂災害が発生しても平屋は垂直避難できないので、ハザードマップで水害リスクの少ないエリアを確認したうえでの土地探しが重要です。土地探しに不安がある場合は、土地探しからサポートしている業者に相談してみても良いでしょう。
低予算でも平屋で素敵な住まいを
平屋は価格を抑えて良い家を建てることができるため、予算重視の方にも適した住宅です。ただし、価格は様々な要因によって変動します。平屋を得意とする業者と出会えればコストパフォーマンスだけでなく、満足度の高い家づくりを叶えてくれるでしょう。実際に平屋がいくらで建つか知りたい方は、まず複数の業者から見積もりを取って比較してみることをおすすめします。